アブラナ科野菜の機能性成分

1.ブロッコリーについて

①ブロッコリーの概要

ブロッコリー(学名: Brassica oleracea var. italicaは、地中海沿岸が原産であり、キャベツなどの原種であるヤセイカンラン(学名: Brassica oleracea)から派生した野菜です。イタリアで品種改良が行われ、現在の形態になりました。和名はメハナヤサイ(芽花椰菜)やミドリハナヤサイ(緑花椰菜)と呼ばれています。可食部は花蕾と茎であり、成長を続けると巨大な花序が形成され、黄色やクリーム色の花が咲きます。日本では、明治時代初期に観賞用として導入されましたが、長い間一般的な栽培は広まりませんでした。1960年代に入ると、ブロッコリーの栄養価値が注目を集め、食用として普及しました。

②主なブロッコリーの品種

ブロッコリーには、茎の先端部分に花蕾をつける「頂花蕾型」、茎から伸びた脇芽の先に花蕾をつける「側花蕾型」があります。一般に市場でブロッコリーと呼ばれるものは、「頂花蕾型」です。「頂花蕾型」の品種は、トップギア、グリーンパラソル、キャッスル、メガドーム、シャスター、サマードーム、緑嶺、緑笛などがあります。花蕾の部分は濃緑色が一般的ですが、黄緑色や紫色などの品種もあります。花蕾が濃緑色のものでも紫色を帯びているものもありますが、これは寒さが原因で色づいたものです。一方で、「側花蕾型」系統は、「茎ブロッコリー」と呼ばれており、茎がやわらかく、甘みがあるのが特徴です。「側花蕾型」の品種には、スティックセニョール、紫セニョール、グリーンボイスなどがあります。また、ブロッコリーと近縁のカリフラワーを交配した、ロマネスコ(一般にカリフラワーの一種と扱われる)も市販されています。

③ブロッコリーの機能性成分

部位機能性成分
ブロッコリー(可食部)グルコシノレート類グルコラファニン(スルフォラファングルコシノレート)
グルコイベリン
グルコブラシシン
ビタミン類ビタミンC
葉酸
カロテノイド類ルテイン
β-カロテン

④機能性表示食品での届出情報

機能性関与成分を含む原材料名機能性関与成分件数
ブロッコリー(スプラウトを含む)スルフォラファングルコシノレート33
GABA15

消費者庁 機能性表示食品の届出情報検索より作成(2024年3月時点)

2.グルコシノレート

ブロッコリー、ダイコン、ワサビ等のアブラナ科植物には、グルコシノレート類が多く含まれます。グルコシノレートはカラシ油配糖体とも呼ばれ、酵素(ミロシナーゼ)によって加水分解され、イソチオシアネートを生成します。例えば、ブロッコリー中のグルコシノレートであるグルコラファニンは、ミロシナーゼが働くことによって、スルフォラファンに変換されます。

グルコシノレート
(グルコラファニン)
イソチオシアネート
(スルフォラファン)
(酵素ミロシナーゼによる加水分解)

弊社ではグルコシノレート類の定性分析定量分析が可能です。
検体にどのようなグルコシノレート類が含まれているか不明な場合は、定性分析をお勧めいたします。
定性分析の結果から、グルコシノレート類を特定し、定量分析を行うことをお勧めいたします。

定性分析:どのような化合物が含まれるかを特定する分析方法 / 定量分析:特定の化合物の含有量を定量する分析方法

【主なグルコシノレート類】

これまでに、132種類のグルコシノレートが発見されています。グルコシノレートはアミノ酸から生合成されます。このため、アミノ酸の種類によって、グルコシノレートは、脂肪族・芳香族・インドールの3種類に大別できます。

例えば、ブロッコリーに含まれるグルコラファニンは、メチオニンの同族体の側鎖を二倍に長くしたジホモメチオニンから生合成されます。脂肪族グルコシノレートは、フェニルアラニンとその長鎖同族体ホモフェニルアラニン、およびチロシンから生合成され、シナルビンなどが含まれます。インドールグルコシノレートには、トリプトファンから生合成されるグルコブラシシンなどが含まれます。

脂肪族グルコシノレート
成分名分子式
グルコラファサチンGlucoraphasatinC12H21NO9S3
グルコアリッシンGlucoalyssinC13H25NO10S3
グルコベルテロインGlucoberteroinC13H25NO9S3
グルコブラッシカナピンGlucobrassicanapinC12H21NO9S2
グルコカッパリンGlucocapparinC8H15NO9S2
グルコケイロリンGlucocheirolinC11H21NO11S3
グルコエルシンGlucoerucinC12H23NO9S3
グルコヒルスチンGlucohirsutinC16H31NO10S3
グルコイベリンGlucoiberinC11H21NO10S3
グルコイベルビリンGlucoiberverinC11H21NO9S3
グルコナピンGluconapinC11H19NO9S2
グルコナポレイフェリンGluconapoleiferinC12H21NO10S2
グルコラファニンGlucoraphaninC12H23NO10S3
グルコラフェニンGlucorapheninC12H21NO10S3
プロゴイトリンProgoitrinC11H19NO10S2
シニグリンSinigrinC10H17NO9S2
エピプロゴイトリンEpiprogoitrinC11H19NO10S2
グルココクレアリンGlucocochlearinC11H21NO9S2
グルコイバリンGlucoibarinC15H29NO10S3
グルコへスぺリンGlucohesperinC14H27NO10S3

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芳香族グルコシノレート
成分名分子式
グルコバルバリンGlucobarbarinC15H21NO10S2
グルコナスツルチインGluconasturtiinC15H21NO9S2
グルコシバリンGlucosibarinC15H21NO10S2
ベンジルグルコシノレートBenzyl glucosinolateC14H19NO9S2

※横にスクロールできます→

インドールグルコシノレート
成分名分子式
4-ヒドロキシグルコブラッシシン4-hydroxyglucobrassicinC16H20N2O10S2
4-メトキシグルコブラッシン4-MethoxyglucobrassicinC17H22N2O10S2
グルコブラシシンGlucobrassicinC16H20N2O9S2
ネオグルコブラシシンNeoglucobrassicinC17H22N2O10S2

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3.イソチオシアネート

イソチオシアネート類は、グルコシノレート類が酵素ミロシナーゼによる加水分解を受けて生成します。このため、植物中にはほとんど存在せず、植物が損傷を受け、酵素が働き、イソチオシアネート類が生成します。

グルコシノレート
(グルコラファニン)
イソチオシアネート
(スルフォラファン)
(酵素ミロシナーゼによる加水分解)

ただし、加熱などによって酵素が失活すると、イソチオシアネート類は生成しません。例えば、茹でたブロッコリーに傷をつけても、スルフォラファンは生成しません。

グルコシノレート
(グルコラファニン)
イソチオシアネート
(スルフォラファン)
(酵素ミロシナーゼの失活)

弊社ではイソチオシアネート類の定量分析が可能です。
植物体に含まれるミロシナーゼを利用して、グルコシノレート類からイソチオシアネート類を生成させ、定量分析を行います。
このため、加熱処理されたサンプルの分析はできません。

定量分析:特定の化合物の含有量を定量する分析方法

【主なイソチオシアネート類】

イソチオシアネートは、化学式「-N=C=S」を共通して持つ化合物の総称です。植物におけるイソチオシアネートは、アブラナ科の野菜に多く含まれるグルコシノレートが、酵素(ミロシナーゼ)によって加水分解されて生成します。例えば、アブラナ科野菜に含まれるシニグリンがミロシナーゼによって分解されると、アリルイソチオシアネート(AITC)を生成します。

成分名分子式
スルフォラファンSulforaphaneC6H11NOS2
スルフォラフェンSulforapheneC6H9NOS2
イベリンIberinC5H9NOS2
アリルイソチオシアネート(AITC)Allyl isothiocyanateC4H5NS
4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネート(MTB-ITC)4-Methylthio-3-butenyl isothiocyanateC6H9NS
3-ブテニル イソチオシアネート(3-BITC)3-Butenyl isothiocyanateC5H7NS
4-ヒドロキシベンジル イソチオシアネート(4-HBITC)4-Hydroxybenzyl isothiocyanateC8H7NOS
アラビンArabinC11H21NOS2
ベルテロインBerteroinC7H13NS2
カメリニンCamelininC12H23NOS2
ケイロリンCheirolinC5H9NO2S2
エルシンErucinC6H11NS2
エリソリンErysolinC6H11NO2S2
へスぺリンHesperinC8H15NOS2
イベルベリンIberverinC5H9NS2
レスクエレリンLesquerellinC8H15NS2
リムナンチンLimnanthinC9H9NOS
アリッシンAlyssinC7H13NOS2
カッパリンCapparinC2H3NS
ゴイトリンGoitrinC5H7NOS

品目別データ一覧



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